泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

脳科学的アプローチの利点

脳科学と発達障害―ここまでわかったそのメカニズム (シリーズCura)

脳科学と発達障害―ここまでわかったそのメカニズム (シリーズCura)

あまり得るもの無く、読了。

 発達障害という、まだ十分に理解されていない脳の高次機能を巻き込んだ行動特性について、本書で紹介した脳機能イメージングの結果は、物理学における原子と電子の理解がエレクトロニクスの発達に寄与したのと同等の効果を、発達障害の臨床に及ぼす可能性を秘めていることは何人も否定できないことである。
 教育や訓練によって、発達障害脳機能イメージングの測定結果に変化が起これば、その厳密な意味づけはできなくても、少なくとも教育や訓練が脳活動に影響を与えていることの証左を得ることができるのである。(「あとがきにかえて」)

 これだったら、脳科学的な知見がどう役に立つのかわからない。脳機能イメージングじゃなくても、行動主義の方法で十分なんじゃないかと思える(むしろそちらのほうが「影響」ははっきり言えるだろう)。脳科学的な理解には「社会モデル」的な障害理解とは違ったメリットがあるように思えるのだが、そこに触れられることはなかった。
 と思っていたら、ちょうどこんな記事が。
自閉症>患者と同じ染色体持つマウス 広島大教授ら作成
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090626-00000004-mai-soci

 一部の自閉症患者と同じ染色体異常を持ったマウスを、内匠(たくみ)透・広島大教授(神経科学)らが作成した。自閉症に似た行動をするマウスの報告例はあったが、同じ遺伝的原因を持つ動物は世界初で、自閉症を起こす脳の仕組みの解明や治療法の開発につながると期待される。26日付の米科学誌「セル」に発表した。
 研究チームはマウスの受精卵を操作し、この染色体異常を再現した。さまざまなテストで行動を観察したところ、重複した遺伝領域が父親由来だった場合にだけ、他のマウスに興味を示さなかったり、同じ行動を繰り返すといった自閉症患者と似た行動を示した。
 内匠教授は「脳のどの部分にどのような異常が起こっているのか解明したい。治療薬や行動療法の開発、効果の確認にも役立つだろう」と話している。

 わざわざマウスを「自閉症」のようにするのは、既になされている人間の脳機能イメージングと比べて、どういう利点があるのだろう。