泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

うーん

 移動時間に読めた。

良い支援?―知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援

良い支援?―知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援

 とても評価が難しい。
 もしこの世の中に「政治」というものがなかったら、と思わずにはいられない。
 知的障害者支援において、少なくともひと昔前は「入所施設支持」vs「地域生活支持」の図式はあっても、「地域」の中での運動方針をめぐる立場の違いは顕在化していなかった(と言っても、自分は学生のころからカウントしても10数年くらいしか関与していないけれど)。
 運動の方針ではなくて、根本的な思想に違いがあるのだ、と言われるかもしれないけれど、少なくとも知的障害をもつ人々を地域で支えていくための思想そのものに大きな差異などないと思う(ただ、自閉症関係に限って言えば、将来的には対立した意見をを含む議論が活発になるかもしれない)。障害観も大差ない(全障連VS全障研みたいな話でもないし)。自分の見聞きした範囲でしか言えないが、さまざまな主張をもって運動を展開しているのは、みんな知的障害/自閉症の人々を地域の中で長年に渡って支えてきた人々である。政治的に異なる立場の人々の中にも、本書の中に書かれているような支援(いわば重度訪問介護的な支援)を制度外で膨大な無理をしながら続けている人たちはいるだろう。他でもない、このフォーラム(→ http://blog.canpan.info/shien-net/archive/23)に名を連ねているような人たちである。
 信念をどんなふうに表出していくのがよいと思うか、という政治的な判断の違い。あえて何を強調するか、あえて何を言わないか。それでも、「これは政治的な判断なのだ」と言ってしまえば身も蓋もないから、表面的には支援観そのものから異なっているかのような議論の構図に見えてしまう。誰かがうまく調停して、「地域生活支援」として一丸となれないものかと自分は心から思っている。今でも「従来の入所施設が一番!」という人たちはまだまだいるのだろうし。
 学生たちにTEACCHとかABAとか「エビデンスベースド」な話を詰め込んだ末、最後にこの本を読ませると適度にバランス感覚が養われるのではないだろうか。あまりこれまで書かれたことがなかった内容の本であることは間違いない。具体的な事例も面白い。ただ、支援者がこれだけ読んで実際の支援に入るとなると、さすがに不安だ(特に自閉症関係は)。