泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

福祉課が無茶を言い始めた

10:30 某保護者から電話。移動支援の利用申請書が届かないため、自治体に問い合わせたところ、「あなたのところの子どもは行動援護にあてはまるので、行動援護を使ってもらう。移動支援の利用は認めない。だから移動支援の申請書ははじめから送らない。今まで使っていた事業所(うちの法人事業所)は来月から使えなくなる」と返答されたという。利用者にも事業者にも一切事前の説明なし。絶句。行政担当者はどうやらAさん。それも機嫌が悪いときのAさんである感じ。柔軟なところと、厳格なところが、混在する人。
11:00 事務所を同じくしている他法人の相談員に相談。まもなくして、その相談員のところにも同じ保護者から連絡。近いうちに関係者が集まって行政窓口に行こうということを話す。すぐにでも話に行きたいが、午後から審査会のため、担当者は不在であることがわかっている。また、機嫌が悪く忙しいときのAさんと話しても、こじれる可能性が高い。具体的な日程調整は明日以降にしようと話す。
11:30 ヘルパーのひとりが体調不良。放課後のケアに急遽自分が入ることに。
12:00 派遣している学童の加配スタッフに給与支払い。記録を受け取り、現状報告を受ける。現場の指導員のトップが全くやる気なしで、いくら頼みごとをしても改善されない不満について聞く。前任の指導員が辞めて夏休みから方針が一変してしまっている。というか、何も考えずに仕事をしている様子。その指導員の恣意的な判断で何の説明もなしに現場の様子が変わっていくことにはきちんと抗議しようと、いくつも方法を話す。次回の会議では自分からもびしっと言うつもり(あちらはめんどくさいので会議自体をやりたくないようだが)。
13:20 不安で仕方がなくなっている先ほどの保護者から、再度電話。行動援護の制度そのものについても十分にはわかっていないので、改めて説明。今回の行政の手続きの問題点についても説明。障害程度区分のことや、医師の意見書のことなどあれこれ聞かれるが、本人の障害の状況が理解されていないということではなく、財政的な事情から来ている問題と繰り返し説明。行動援護と移動支援が両方使えるものと思っているようなので、この自治体では併給は認められないということも伝えると(認められる自治体もある)、さらにショックを与えてしまう。話しているうちに、ケアの時間が迫ったため、担当のヘルパーに話の続きをまかせて、移動。
17:00 ケアから戻ると、行動援護についてどうやら他にも同じような事例が出ていることが伝わってくる。いまだに何の連絡も入らない移動支援ヘルパーの資格要件とも間接的に関わってくるため、自治体担当者のBさんに問い合わせたところ、「要綱はうちで作っていないので、恥ずかしながらわからない。隣の自治体に聞いてほしい」と言われる。
17:25 隣の自治体福祉課に電話すると「本日の業務は終了しました」のメッセージ。
18:30 話を聞いた養護学校の進路相談担当教員がやってくる。自分と相談員と進路相談担当教員で話し合うが、どう考えても行政の手続きがおかしい。これを認めたら、申請もあがっていない行動援護の支給決定を勝手に行政が行い、強制的に行動援護に移行させることで、利用できるサービスがなくなる可能性がある。もっと言えば、それを見越して行動援護の決定を打ちまくり、実質的な利用抑制をかけることさえできてしまうということを確認。進路相談担当教員は夕方自治体に電話したようだが、自治体担当者Bとしては矛盾を感じている様子だったらしい。ただ、担当者Aが譲らないためにこのような展開になっているのではないかという想像。近隣の自治体と何か申し合わせがあるのではないか、とも想像。
19:30 相談員のところに自治体から電話。担当者Bから。すべてはこちらの予想通り。担当者Aが譲らないらしい。自治体間でもそのように申し合わせており、絶対に移動支援は認めないと言っているようだ。しかも忙しいので、今月中は話し合いの場など設けられないという。近日中に厚生労働省の役人や福祉課担当者と同席する機会があるので、「本人が申請していない行動援護を強制的に利用させられ、移動支援の利用申請をはじめから認めない、ということがありうるのか」を国に確認しようではないか、という話で落ち着き、進路担当教員は養護学校へ帰っていく。保護者からは、相談員とうちの法人に再度電話あり。「その後、どうなっているか」と。経過報告。
20:15 某法人の偉い人と相談。偉い人、絶句。その法人は行動援護の事業所指定を10月から受けられる予定だが、今回のような一方的な決定が続けば需給調整ができなくなると言う(うちの事業所を使えなくなれば、この法人事業所の利用へと向かう可能性が高い)。この自治体内でたったひとりだけ利用がある事業所(他地域)が行動援護の指定を既に受けているので、そこを使えばいいじゃないか、と言われてしまう可能性はあるが、地元の地域資源は当然大事である。今後、強調して話し合いの場を持つことのできるようにセッティングすると約束してくれた。厚生労働省に確認・指導してもらうと話が大きくなりすぎるので、それは止めておくようにとも助言あり。

 ・・・ぐったり。
 なぜ、この保護者がこれほどまでに焦っているのかと不思議に思う人がいるかもしれないが、その子どもは養護学校卒業後、受け入れてもらえる通所先がなく、現在利用している福祉サービスはうちのガイドヘルプのみ。ヘルパーは特定の1名のみ。彼女にすれば、わが子が社会とつながる唯一の接点。そう簡単に他の事業所へと言われても、何も考えられない。10月の利用予約だって、当然うちは受けているし。通所先については、ずいぶん自治体行政や関係者一同がんばったのだが、本人と家族が納得できるところがなかったのだ。いまだに養護学校の進路担当教員がかかわっているのは、そのため。行政担当者の口ぶりからは「あんなにいろいろ調整したのに、結局どこも無理だなんて、勝手ばかりいいやがって」という思いも透けて見える。
 金がない地方自治体として、できるかぎり国の事業に移行させたい気持ちはわかるし、実際のところ少しずつ行動援護に移行させていくことは事業所にとっても取り組むべき課題であろう。経験年数の長いヘルパーの供給を安定的に実現しなければ、知的障害者の地域生活支援事業所は生き残りが難しい。うちもこのケースのために30%減算の行動援護事業所指定を受ける用意はある。それよりも今回の問題は、行政の強引極まりない進め方である。ここ数ヶ月の間にさんざん対話を重ねてきたのに、介護給付の申請締め切りを2日後に控えて、どういうことか。行政のこのような動きを想定できていなかった自分を責めるべきなんだろうか。9月27日にもなって、そんなこと言い出すと誰が想像する? そうしたいならば、もっと早くから説明や相談があるのが普通だろう。
 そんなわけで10月に入ってからもまだまだ苦しめられそう。夕食はまたコンビニ。