泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[ニュース][社会福祉]社会福祉士の未来

 世間の人々の多くは全く興味のない話題かもしれないけれど、福祉新聞2月20日号より。

社会福祉士 資格制度見直し 任用・活用策を検討へ 厚労省、関係団体と意見交換始める
 厚生労働省社会福祉士制度の見直しに向け、1月末から関係団体との意見交換を始めた。社会福祉士の任用・活用を進めることが狙いで、早ければ4月にも正式に検討会を立ち上げる。
(中略)
 意見交換会のテーマは、「福祉ニーズの実態とそれへの対応」「求められる専門性と社会福祉士の知識・技術との関係」「職場における社会福祉士への理解と活用状況・社会福祉士の必要性」「求められる社会福祉士像と養成教育のあり方」など多岐にわたる。

 福祉系の仕事をする人なら知らない人はあまりいない「社会福祉士」という資格制度がある。この活用が十分に進んでいないので、「資格のもちぐされ」になっている。まあ、このあたりまではよいのだけれど、だんだん話はおかしな方向へと進む。

 中村局長は見直しの背景として、
(1)1990年代以降、社会保障給付費の比重が医療から福祉にシフトしていること
(2)特定の低所得者対策だった福祉が普遍的な契約制度に移行したこ
(3)2015年問題に象徴される高齢社会像
――を挙げ、「こうしたパラダイムの転換を想定して社会福祉士が作られたかどうかは疑問だ。新時代にふさわしい養成、国家試験を考えなくてはならない」と話した。

 世界に「高齢化が進んだから」とか「契約制度に移行したから」とか「福祉への給付が増えたから」という理由でソーシャルワーク養成のカリキュラム等を変更しようとする国がはたして他にあるのだろうか。法制度が変われば大学での学習内容も試験内容も変わるのだから、制度の変化は大きな理由になるまい。昔に資格取得した者が現在の制度を知っているか、という問題はあるだろうが、それは更新試験でもしない限り、どんなカリキュラムを組んでも同じである。
 見直しの背景は一点につきる。「この資格を持っていても、ほとんど得をしないこと」である(就職先にもよるけど)。圧倒的に雇用の多い介護施設等でもてはやされるのは介護福祉士。障害者福祉施設も同様。これからますますその傾向は強まる。専門学校に2年通い自動的に介護福祉士資格を取得した者が就職しやすく、4年制大学卒業後に受験までして社会福祉士資格を取得した者が就職できない。社会福祉士会や養成校にとってみれば、それは我慢ならないことだろう。
 なぜこのようなことになったのか。相談支援の現場が限られているからである。そして、社会福祉士ソーシャルワーカーとしての専門性など誰も信じていない。資格をもっている者自身も信じていない。受験のために「よく勉強したね」という証明でしかない。実習で相談支援をさせてもらえるはずもないし、とりあえず大学等にまじめに通い、教科書をよく覚えることが資格取得につながる。
 アメリカ等のソーシャルワーカーと比べたとき、心理職的な機能が弱い上に、何らかの理論に明確に基づいた実践が推奨されているわけでもないのだから、学習内容は法制度等に関する断片的な知識の寄せ集めにしかならない。そして、制度は毎年のようにころころと変わり、地域ごとに運用の実態もばらばらでありさえする。この資格が何の役に立つだろうか。

 また、介護保険に位置付けられた地域包括支援センター障害者自立支援法生活保護制度における自立支援プログラムの概要に触れながら、社会福祉士の実践領域が広がっていることや社会福祉士が活躍することへの期待を語った。

 相談支援の根拠となる制度の実態を見れば、本気で言っているとは誰も信じられない。某誌にも掲載されていた以下の文章を読もう。
相談支援を憂う(冨田昌吾)
http://homepage2.nifty.com/totutotu/soudansiennwoureu.htm
 ちなみに冨田さんの主張の中で最も共感したのは(とてもマニアックな話題なのだけれど)、

 私は関係者にいいたい。2003年の冬の市町村障害者生活支援事業、障害者児地域療育等支援事業の一般財源化(補助金化)の議論や運動は一体なんだったのか、と。

 本当になんだったのだろう。あの頃は障害分野問わず、運動に一体感があった。全国各地からエンドレスに送られる抗議ファックスで、厚生労働省の機能を止めてしまうほどの迫力があった。もうそんなことが起こることはないのだろうか。
 少し話は変わるが、今日聞いた話。来年度、この地域の高齢者福祉系の社会福祉法人と障害者福祉系の社会福祉法人がともに来年度は数千万単位の減収見込だという。異常事態はまだまだ続く。