泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

[社会福祉]多数派を目指す空しさ

福祉先進地、鷹巣町の出来事(色平哲郎)
http://www.yorozubp.com/0602/060220.htm
 地域福祉を勉強する者なら、鷹巣の実践は有名だった。
 まさに住民の声を聞き、住民を主役として、地域福祉を実現しようと尽力した。その鷹巣の落日を関係者(特に地域福祉研究者)はどう見ているのだろう。あまり話を聞かない。
 全国に誇る福祉を実現しようとした町長が選挙に負けた。少なくとも住民の多数が彼の味方についてくれなかった。福祉の充実に否定的な者は、「住民は福祉の充実なんて望んでいないのだ」「これが住民の声だ」「民主主義だ」と言うのかもしれない。NPO関係者の一部ならば、「福祉はまだまだ内側に閉じているから多くの人に支持されないのだ。もっともっと福祉に関係のない人々にアピールする方法を考えないと」などと言うかもしれない。
 色平氏は書いていないが、選挙に敗北した一因は近隣との合併であったという。
秋田県鷹巣町の前町長さんが語った「住民が選択した町の福祉」(JANJAN
http://www.janjan.jp/area/0412/0412201795/1.php

 ・・・しかし、ここに「合併」問題が持ち上がったという。鷹巣町合川町森吉町阿仁町の周辺4町の合併が協議され、鷹巣阿仁地域合併協議会が発足した。そこでの最大の焦点は「鷹巣町の福祉」であった。「鷹巣町の先進的な福祉が4町合併の障害になっている」「福祉は平等であるべきだ」「身の丈にあった福祉こそ今求められるべきだ」と、他の町からの批判が噴出した。
 去年の町長選挙は合併を推し進める国と県の意向が間接的に反映され、合併を予定している他の町のトップが介入し、正々堂々とした選挙はできず、ついに岩川氏は落選した。「このまま合併が完了すれば福祉は低い町の予算に合わせられ、ますます住民が望む形にはなっていかなくなる」と、最後に岩川氏は危機感を訴えた。

 「たとえ合併問題があったにしろ、住民の多数は『身の丈にあった福祉』を望んだのだ」のと言われたら、自分たちはどう反論すればよいのだろう。「やはりもっと多くの人に福祉サービスの重要性を理解してもらわなければダメだ」という考えに、自分は直感的に合意できない。いつでも多数派にならなければ「必要」なものが得られない仕組みがそれほど常識的とも思えない。もっと勉強しなければ自信をもっては主張できないけれど、そうでなければ救いがなさすぎる。
 数年経って、次の町長選挙が行われればどんな結果に至ったかはわからない。しかし合併した今、前町長の施策に対する評価が今後の選挙に及ぼす影響力は限られている。合併は住民の試行錯誤のチャンスを奪ってしまった。惜しまれてならない。