泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

2冊読了

中学生からの作文技術 (朝日選書)

中学生からの作文技術 (朝日選書)

 基礎的でありながらあまり教えられたことのない文章技術が、実例も豊かに紹介されている。「中学生から」なんてとんでもない。学術論文の中にもわかりにくい文章はたくさんある。大学院生でも読んだほうがいいのではないか。個人的には、第2章「かかる言葉の順序」と第3章「テンやマルのうちかた」を読んで、これまで書いてきた文章をたくさん反省させられる。 企業による法的福利費・非法定福利費の負担を廃止して、すべてを税方式(累進消費税)による国家負担に切り替えるという思い切った提案がされている。批判が多いことを承知での積極的な福祉国家推進論である。
 社会福祉に携わる者として思い返せば、介護保険制度が創出された際にも、税方式と保険方式のどちらを選択するかの議論があった。そのとき税方式を支持する理由の多くは「最低限の生活保障は税でまかなわれるべき」という規範的なものだったように思う(一方の社会保険肯定派は「税だと使途が不明確になる」と主張していた)。
 筆者は、現行の社会・労働保険制度や企業独自の福利厚生制度が十分に機能していないことを示す根拠を提示した上で、あらゆる福利厚生において税方式を支持するに至っている。社会福祉研究はどうしても「企業」と縁遠い感があるが、企業の負担する福利厚生費こそが重要な福祉財源ともなっているわけで、新鮮な気持ちで読める。
 終盤では福祉国家批判への反論として、

わが国では所得税社会保険料が国民の労働供給にマイナスであったという証拠はどこにもない
(175ページ)

とか、

経済のパフォーマンスが悪くなると、福祉がその原因であると批判されやすい。しかし、これを支持する証拠はほとんどない。言い換えれば、福祉はスケープ・ゴートにされやすい。
(177ページ)

とか、経済においては何かと悪者にされやすい「福祉」を弁護してもらっているみたいで、少し心地よかった。
 この次の介護保険制度の見直し時には、保険料の徴収年齢引き下げの議論が再燃するはずであるが、なかなか引き下げは容易でなさそうだ、ということもわかる一冊。