泣きやむまで 泣くといい

知的障害児と家族の支援からはじまり、気がついたら発達障害、不登校、子どもの貧困などいろいろと。関西某所で悩みの尽きない零細NPO代表の日々。

報道ステーション特集雑感

 介護保険事業者の不正を暴く特集第2弾。内容は、以前から社会福祉業界では指摘されてきたことばかりなので、特にどうということはない。けれど、民放のニュースでこの時間に特集として報道されることの影響は大きい。一般の国民はどう感じたか。不正100億といっても、5兆円を超える介護保険財政全体の規模からすれば、本当にわずかな割合である。ほとんどの事業者はまじめにやっている。はた迷惑な話と感じている人も多いだろう。報酬単価の引き下げには、どんなことだって理由にされうる。
 介護保険の導入時に市場原理を入れたことを責めるのはたやすい。営利追求の事業者が数多く参入してきたことも確かである。それらの中に倫理性を欠く事業者があることもまた確かなのだろう。しかし、もし市場原理を入れなければ、これほどまでに資源は増えなかっただろうとも言える(とはいえ、今でも田舎にいけば、事業者が数多くあるとは言いがたいはずだが)。一方で、事業者が増えたから、競争原理が働きサービスの質が高まっているのかと言えば、そのあたりはよくわからない。実証的な調査結果などあるのだろうか。ひとつの事業者で量的に対応しきれなくなったところを、別の事業者がカバーして・・・、ということが起こっていれば、結局サービスの質をめぐる競争など起こっていないことになる。資源の少ないところでは、よくある話だろう。
 笑うしかない「筋トレ」の導入以外、介護保険関係でどんな議論がなされているのかはよく知らないので、あまり自信をもって書けない。それでも、不正撲滅への近道として、ケアマネージャーの中立性確保が主張されていくのは当然の流れだろう。しかし、事業者からの独立なんて、本当に可能なんだろうか。番組では事業者所属のケアマネージャーの半数が独立を望んでいる、なんて調査があったけれど、形式的に独立したところで、実態として利益誘導が起これば同じことである。独立開業すれば中立というのは、あまりに楽観的だろう。以前に雇われていた事業者をないがしろにできるとも思えない。独立したことで、堂々と利益誘導ができる口実になる可能性だってある。
 不正受給された介護報酬はどこへ行ったのだろう。依然として女性ヘルパー中心の介護保険事業者だが、一般にはどんな経営状態で、どのくらいの給与水準なんだろうか。慢性的なヘルパー不足の声もあるようだし、採算をとるためにサービス提供エリアを拡大するという話もある。そんなに恵まれているとも思えない。一方で、報道ステーションでは、過酷な労働をこなすというケアマネージャーの手取りが30万円を切るという話が気の毒そうに報じられていたが、正直「えっ、給料いいじゃん」と思ってしまった。
 知的障害者の地域生活支援をしている事業所職員の給与は平均15万円程度とも言われる。自分は手取り12万円あまり。もっと悲惨な業界も福祉分野にはたくさんある。そういうことも伝えてはもらえませんか、報道関係の方々。